誤解のないように言っておきたいが、オレはダンスそのものを嫌っているわけじゃない。正確には、それを取り巻く環境や、風潮を嫌っているんだよ。
運動音痴=運動嫌いとは限らないだろう。このオレがそうさ。
特に球技はからきしだったが、足は速かったから陸上部に所属していた。授業のソフトボールだって、下手なりに楽しんでいたよ。
人をダンスに誘う者は、皆口を揃えてこう言う。
「下手でも良いじゃん!皆で楽しく練習しようよ!」
ああ、それはごもっともだ。オレは下手でも楽しむことが出来る人間だから、よく分かるよ。しかし、ことダンスという競技にだけ、重大な落とし穴がある。
それは、「人前での披露を前提としていること」だ。
下手でも良いから、皆と楽しく。そんなのは、内輪でやっている時にだけ通用する綺麗事なんだよ。人前に立つとなると、必ず客観的な評価が伴う。そしてダンスが下手な者は、平気で笑いものにされるのさ。
例えばお笑い芸人なら、「運動神経悪い芸人」とかいって笑いを取れるから、オイシイ部分もあるだろう。しかし世の中の殆どはお笑い芸人ではない。誰だってバカにされたくはないだろう。
言っておくが、オレはダンスが下手で笑われた経験は無い。下手でも楽しめる人間だから、文化祭の準備にしろ、ダンスの練習にしろ、皆と楽しんでやっていたよ。教室の隅でいじけていたようなタイプではない。
だがオレは生まれつき体の動きがおかしく、歩き方さえヘンと言われるような人間だ。
だから運動が苦手な者や、人前で踊るのが嫌な人間の気持ちは、痛いほどよく分かるんだよ。オレの時はダンスが必修じゃなかったからまだマシだったが、今十代なら地獄だったろうな。
もちろん単なる趣味や遊びなら、オレはそれをどうのこうの言うつもりは無い。
しかし、授業にまで盛り込んで必修化するとなると、話は別だ。
自己表現とか言うけれど、それがダンスである必要性が何処にあるんだ?リズム感なら楽器でも身につくだろう。望んでダンスが下手に生まれたわけじゃないのに、何故それを強制されて、笑い者にされなきゃいけないんだ?
教師だってダンスの練習に疲弊しているというニュースをいくつも見たぞ。体を動かすという観点なら、ダンスである必然性は皆無だ。
そもそも、ダンスで喜んでる連中を想像してみろ。道塞いで踊ってるような奴の偏差値、絶対低いだろ。
ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾスやサム・アルトマンが路上で踊ってる姿なんて、想像できないだろ。
まあ、オレはこれでも楽器を嗜んでいるから、ライブを観る機会はある。
だから音楽を聴いて自然に踊り出すことはあるし、それも広義でのダンスだろう。
斯様にオレは、ダンスそのものを嫌っているわけでは無い。それを必修科目にすることや、下手な者をからかう風潮や、道を塞いで踊ってるようなヤツの属性を嫌っているのさ。
最後に一つ。ダンスが苦手なオマエ、ギターを弾け。オマエには才能がある。
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