ギター

【機材紹介】Gretsch 6119 Tennessean

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ついに手に入れた、テネシアン。

実のところ、ビンテージのテネシアンはゆるりと探しておりました。ずっと昔から頭の片隅にあり、いつかは欲しいと常々考えていたんですね。しかしビンテージギターというのは減る一方ですし、相場は上がります。ですから、「いつかは欲しい」くらいの気持ちでは難しいのですね。その時々で、ちょっと無理をしないと永久に手に入らないことを痛感しました。

その間にも、チバユウスケの死というあまりに辛い出来事があり、テネシアンは高騰、枯渇。いよいよ手に入らなくなってしまったか・・・と諦めつつも懸命に捜索したところ、やっとの思いで見つけた一本です。

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ついに購入、テネシアン。

それがこちら、Gretsch 6119 Tennessean 1962 です。

こちらは価格と状態のバランスが優れていて、少なくとも私の購入したタイミングにおいては最良の選択でした。年式は1962年製で、シミュレイテッドFホールのフチが無く、スタンバイスイッチ搭載、ヘッドにプレートが無いことから判別できます。

先に申し上げておくと、こちらはいわゆる「理想的」な個体ではありません。ビンテージギターにおける理想とは、人気のある年代であるとか、状態が良いとか、フルオリジナルであるとか。テネシアンの場合、人気があるのは1964年製。日本国内においては浅井健一の影響が大きいでしょうね。バインディングが崩壊しておらず、ボディの赤みが残っている個体だと高値で取引されています。

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逆に人気が無いのは1967年以降のモデルで、ボールドウィンによる買収後に品質が落ちたのだとか。このあたりは20万円代でよく見かけましたが、やはり相場は上がっています。

もちろん、一般人である私が理想の個体を追い求める必要はありませんから、ある程度の妥協は必要です。

ボディ

テネシアン最大の特徴は、シミュレイテッドFホール。ハウリング対策として穴を塞ぎ、その変わりにFホールの絵を描くというパワー系ソリューションです。昔は死ぬほどバカにしていましたが、今ではこのプリントが最高に愛おしい。ちなみに実際にFホールの穴が空いているテネシアンもありますから、仕様としては迷走しています。ボディの厚さは約1.85″ (47 mm)で、フルアコとしては非常に薄くなっています。ES-335等のセミアコと似たような使用感で、そこそこ弾きやすいです。

私は特に年式にはこだわらずに探していましたが、フチ無しシミュレイテッドFホールは好みなので満足しています。基本的にテネシアンは1963年以降フチ有りですので、フチ無しの初期の個体はなかなかレアであります。

散々擦られた話ですが、”テネシアン”という名称はチェット・アトキンスのアルバムが由来です。その後チェット・アトキンスは品質が低下したグレッチに見切りを付け、ギブソンに鞍替えしました。その時の権利関係で”テネシアン”という名称が使えなくなったため、”テネシーローズ”へ改名されています。その時改めて、ギブソンから同名の”テネシアン”という全く別のギターももリリースされています。

比較的安かった品なので、欠点が無いわけではありません。最も目立つのは、ピックガードが欠品していること。本来はチェット・アトキンスのサインとテネシアンのロゴ入りの銀色ピックガードが付いています。グレッチはピックガードの割れや紛失が多く入手も困難なので、こだわる場合は妥協すべきではありません。私は諦めました。いつか適当な互換品を取り付けようと思います。

コントロール

コントロールは複雑で、ピックアップセレクター・マスタートーンセレクター・マスターボリューム・フロントボリューム・リアボリューム・スタンバイスイッチ(キルスイッチ)の6つ。公式サイトに詳しい説明が書いてあります。私は大体フロントかセンターで固定、マスタートーンはニュートラル、他はフルテンです。スタンバイスイッチは当然使いません(猛爆)。

Gretschギター基本操作ガイド

スタンバイスイッチのノブはギブソン系に置き換わっていますので、後日交換予定。どちらかに倒すと音が出て、センターだと全ての音がミュートされます。ちなみに1961年製にはスタンバイスイッチがありませんが、この機能、要ります?不意に触れて音が出なくなってしまうリスクのほうが問題だと思うのですが。まあ無駄な機能が沢山あるギターは私好みですけどね。ジャズマスターとか。

ブリッジ

ブリッジはロッキングバーブリッジですが、これは現行品に交換されていますね。本来はもっと細いものが搭載されているはずです。何れにせよ正確なオクターブチューニングは出来ませんので、大差はないのですが。しかし弦高を下げきってもまだ高すぎるので、別のものに交換するか木台を削るなどの対処が必要かもしれません。ビグスビーのアルミブリッジは台座から薄いので、試してみても良いかもしれません。

ヘッドストック、ペグ

ヘッドストックにはプレートが無く、ロゴの位置は低め。ペグボタンは一般的な丸い形状で、平らになるのは1964年からです。

ブッシングはビンテージのグレッチ、あるいはマーチンによく見られる大きめの六角ブッシングです。このタイプは見た目に反してネジが切られておらず、打ち込まれているだけ。ですから不意に脱落することもあるでしょう。この個体も、1弦だけ別種の小さいものが取り付けられていますね。全く同じものを入手するのは不可能ですから、諦めます。

ペグはオープンバックで、ギアが露出しています。これは整備性が良いためお気に入りです。マイナスネジを締めることである程度のトルク調整が出来ますし、グリスの塗布も簡単です。

ネック

ネックバインディングはオリジナルであると思われますが、フレットはおそらく交換されています。元はフレットエッジバインディングのはずですが、削れていますね。僅かに出っ張りが残っています。フレットの有効範囲が狭いので、どうせならオーバーバインディングに変更したいところです。

しかしバインディングがこんなに綺麗に残っていること自体が奇跡的です。ビンテージグレッチは、大抵バインディングが崩壊していますからね。

セルロイドは劣化するときに強い酸性ガスを放出し、周囲を腐食させます。フレット端が真っ黒になっている個体はそのせいです。リペアに出すとフレット交換とバインディング交換がセットになるので、工賃は高額になりがちです。購入時、フレットとバインディングの状態については熟慮すべきでしょう。とはいっても、綺麗な個体なんてほぼ存在しないのですが。

ボディ裏には補強ネジを隠すためのボタンが入っていますが、何故か側面にもセルのボタンが付いています。これは本来は存在しないはずなので、誰かが後から補強を追加したのかもしれません。

ピックアップ

ピックアップはハイロートロンを二基搭載。

「ハイロートロンはフィルタートロンの片側のポールピースを抜いたもの」というのは誤情報であり、ハイロートロンは完全なるシングルコイルです。ポールピースは一列、コイルも一列。ですからハムキャンセルは起きません。磁石は側面に付いています。

こちら、Xで有識者に確認を取ったので間違いありません。

音の特徴

始めて持ち上げた感想は「重い」でした。フルアコ構造のはずですが手にズッシリと重量が伝わります。生音は非常に不思議で、フルアコらしい音量ですが必要以上に音が響きません。これぞシミュレイテッドFホールの威力でしょう。ほぼ同じ仕様でFホールが空いているClipperなんかは、薄めのボディに似つかわしくない爆音を轟かせますから。

アンプからの出音は、深く歪ませたほうが好みです。言葉にするのは難しいですが、音がバリっと前に出てくる感じで、カラカラに乾いたシングルコイルのサウンドと歪みがマッチしています。私の場合フロントかセンターがしっくり来ます。リアは音が硬すぎて好みではありませんでした。

ビンテージグレッチなんてやめとけと、本当に思いますよ。まずまともな個体は存在しないですし、

グレッチといえばジェントリーにジャズやカントリーを弾きたくなるところですが、こいつは思いっきり叫ぶのが好きなようです。

ビンテージグレッチなんてやめとけ、とは思うけど

ギターを道具として使うにあたって、ビンテージである必要はありません。ビンテージギターの金額なんてのは単なる骨董価値や希少価値、つまり付加価値が乗っかっているだけであり、実質的な価値ではないからです。

無駄に高くて、ボロくて、弾けたものではない。メンテナンスも高くつく。そんな代物を、とても他人に勧めることは出来ません。

しかし、ビンテージを一度所有しないと分からない感覚とか、経験というのは確実にあります。

もちろん理想を追求するといくらお金があっても足りませんから、無理をする必要はありません。私が以前ビンテージのClipperを買った時なんて、「一番安いビンテージのグレッチだったから」という酷い理由でしたが、それでも嬉しさは変わりません。金額の問題ではないのです。

XにてMNGの報告をしたところ、かつてないほどの反響があり、たくさんのお声掛けをいただきました。これがビンテージの、グレッチの、テネシアンのパワーということなのでしょう。

所有することの喜び、それを通して得た経験、人との繋がり、心の豊かさ。こういった感覚って、やはり一度所有しないと分からないことだと思うのです。

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