音楽評

ロッキンユーの打ち切り理由を考える

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漫画は人気がなければ打ち切られます。もっと言うと「単行本が売れなければ」です。面白いのに人気がない漫画はありますが、残念ながらロッキンユーは面白くなかったです。私も応援してはいたのですが・・・。

バンドがテーマの作品といえば、BECK、日々ロック、けいおん、バンドリなんかが有名でしょうか。けいおんとかは「美少女」と「バンド」がコラボしたような感じでバンドものとしてのリアリティはそこまで求められていない気がします。

大定番はBECKで、楽器の描画が繊細でコユキのシグネチャーモデルが出た程です。BECKは一気読みがオススメ。

そんな中ロッキンユーは比較的リアルな路線でデビューしたと言えます。「実在のバンド名や曲名の登場」と、「ロック特有の根暗さ」を推してきた点が特徴的です。特に後者は目の付け所が良く、ロックは不良の音楽などではなく音楽好きの大人しいオタクが大半なのです。

今の時代に「そこそこリアル」なバンド漫画というのは、その希少性だけでヒットしてもおかしくなかったでしょう。実際に連載当初はそれなりに注目され、音楽業界からも期待の声が上がりました。

続かなかった勢い

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最初のこの見開きとか好きでしたけどね。

最初の勢いのまま続けていれば、バンド漫画業界に多少の爪痕は残せたかもしれません。しかしロッキンユーはジャンプ+での掲載で、休載が許される環境です。作者の体調不良もあったそうなのですが、とにかく休載が多かった印象です。

作中の勢いとは裏腹に、一ヶ月以上の休載が断続的に続いていました。そうこうしているうちに私も次第に読まなくなってきましたから、やはり最初の勢いに乗り切れなかったのは大きな躓きです。

また作者様のツイートから察するに、編集者に不満があったのではないのでしょうか。アンチのツイートで精神を病んでアカウントを一旦削除したりもしていました。ツイッター中毒のような症状が出ていましたので、作者様はツイッターから距離を置いた方が良かったと思います。

そこはかとなく漂う痛々しさ

作者様はものすごい音楽好きなのかもしれません。ものすごい音楽通なのかもしれません。でも登場する音楽は9mm。THE ORAL CIGARETTES。 初音ミクなどなど。うーーーん、やっぱりちょっと邦楽ロック厨に寄せすぎたチョイスだと思います。

私は邦楽ロックは好きでも嫌いでもないですが、自意識過剰な邦ロック厨が大嫌いです。#日曜日だし邦rock好きな人と繋がりたい とかいうハッシュタグで呟いて、自身の音楽性を表明したくて仕方がない人たちとか。私は音楽で人と連みたくない。日曜日と何の関係が?

話が逸れましたが、やはり曲やバンドのチョイスであったりキャラクターの思想が「痛い音楽通」そのものであることがどうも受け付けませんでした。

軸がないストーリー

ストーリー序盤は高校生がロックと出会って楽器を初めて~といったような王道です。そのままロックに没頭していくような展開ならば良かったのですが、

  1. ロックに出会う
  2. ご都合主義的にメンバーが集まる
  3. いきなりライブハウスで演奏

みたいな感じで、話が急速であっちこっちに行き過ぎなのです。なんというか、ロックの良さとかバンドの楽しさとか楽器の純粋な面白さとかが全て置き去りで、話だけがどんどん進んでいく感じなのです。

ただこのあたりは編集の手腕もあるかと思います。掲載レベルでなければテコ入れするのが編集者の仕事です。週刊少年雑誌の世界などバクマンくらいでしか知りませんが、ジャンプ+の編集者はどうなってるんでしょう。

編集としてはSpotifyとコラボしたり推薦文の執筆依頼をしたりと、宣伝に奔走していたというのは伺いしれます。話題性もたっぷりだったので広報活動に力を入れるのは間違ってないと思うのですが、やはり作品自体の魅力が追いついていなかったと思います。

絵にリアリティが無い

荒削り感という良さはありますが、ただ単に雑な印象を受けました。テレキャスターがぐにゃぐにゃだったり。私でも「ここブラシツールで描いたな」と分かるシーンがあったり。人物の絵柄は腐女子丸出しです。まあそういう画風が好きな人も居るとは思いますが、もう少し丁寧だと良かったと思います。

たとえ人物や背景が雑だったとしても、楽器だけは実写トレースをしてでもきちんと描いて欲しかった。漫画を描くのはとてつもなく大変だと思います。でも楽器描写だけでももう少しリアルさがあれば話に説得力が出てきたのではないでしょうか。

絵も話もイマイチとなると、残ったのは作者の趣味です。作者好みの男の子が、作者好みの音楽を語る。これではただキャラクターに作者の気持ちを代弁させているだけで、作中で批判された「痛い自称音楽通」から脱せていません。

作品にリアリティがあれば、まさしくその生きたキャラクターが喋っていると感じることができるわけで、キャラクターの作り込みができていなければ「これ作者の思想なんだろうな」としか思えないわけです。

例えばカイジでは利根川が「金は命より重い・・・!」と発言しますが、それは漫画の世界観とキャラクターがしっかりと出来ているから、漫画家から独立した利根川というキャラクターがそう言っているのだと思えるわけです。

感情移入できないキャラクターたち

キャラ付けが薄く、私はキャラクターの名前を誰一人として覚えられませんでした。

その割に設定資料集があって驚きです。およそ設定と言えるものの存在を感じなかったのに。

キャラAは60年代ロック原理主義者とか、キャラBは痛い邦ロックヲタだとか、キャラCは音楽に興味なしとか。そういう濃いキャラ付けがあればもっと話を作りやすかったのでは?

あのゆらゆら帝国が好きなキャラ(名前忘れました)が夜行性の生き物三匹をジャムるシーンとか、ストーリー上すごく重要な部分であるはずなんですけど何の感動もありませんでした。

とはいえ頑張ってほしかった!同人で続編「ロッキンニュー!!!」として継続

希少なバンド漫画としてもう少し頑張って欲しかったというのが本音です。特に根暗なロックンロールという着眼点は本当に良かった。ロッキンニュー!!!というタイトルで続編を出しているようなので、続きが気になるかたはどうぞ。

ジャンプ+は作者を応援するため、作品を継続させるために読者ができることを明示するべきじゃないでしょうか。ただ答えは一つでしょう。「単行本買え」というだけです。同じくジャンプ+で漫☆画太郎先生が「いいジャン不要、単行本買えバカヤロー」とぶっちゃけてしまってます。

連載終了時は多数の終了を惜しむ声が上がりましたが、結果として単行本は売れていません。それってつまり、タダなら読むけどカネを払って読むほどでは無いということです。読者の反応は残酷なもので、みんなこのマンガにそこまでの価値がないことを見抜いていたのです。

だったらweb漫画の存在価値って何なんでしょうか。サービスによって収益モデルは異なりますが、単行本の売上にしか価値がないのなら、わざわざwebでやっている意味って?

誰かに届いたと言う価値

終了を惜しむ声が上がったということは、大なり小なり誰かには届いていたという根拠です。このマンガが言うように「少数の誰かには刺さった」のですね。売れなければ価値がないとは私は全く思いませんし、若くしてジャンプ+に掲載だなんて凄いじゃないですか。

誰かには届いた。終了を惜しむ声が上がった。最終的にロッキンユーは、多少なりとも爪痕と存在価値を残していったのだと思います。

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