音楽評

フジファブリックの爪痕

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2009年12月24日の訃報を忘れもしない。

自分で見つけて、やっと好きになったのに突然死んでしまった。正直なところ訳が分からなかった。好きなバンドのボーカルがあっさり居なくなってしまうことがあまりにも虚しかった。

だからと言って所詮赤の他人だし、涙を流すことはない。逆に、「志村クンの訃報を聞いて涙が止まらなかった」なんてイカれたことを言うグルーピーはどんな神経をしているんだろう。お前はお友達か何かか。

同年はアベフトシも急逝し、実に嫌な年だった。

最近になって、テレビでフジファブリックをよく見るようになった。勿論、志村正彦ありきだ。彼の映像と山内総一郎が重なる。この演出はクイーンでも見たことがある。

毎年12月になると、きっと彼の追悼特集があるのだろう。

志村正彦といえば死因がセットで語られる。公式によると不詳だし、不整脈とも言われている。結局の所、ファンがそれを知ることは無いのだろう。

正直言って彼は線の細いか弱い青年だったし、儚げな雰囲気はあった。だからといって、本当に死ななくてもいいじゃないか。

しかしそろそろ追悼はいいんじゃないかと思う。山内総一郎がボーカルを執ってからの活動期間の方が長いのだし。

彼の地元山梨のパンザマストは、命日の前後「若者のすべて」になるらしい。私は志村正彦の訃報では一滴も涙を流さなかったが、「若者のすべて」のイントロと「陽炎」のサビには弱い。

たとえば「君が好き」というワードがあったとしたら

フジファブリックはそういう風な事を歌わないんですよね

「君の事は嫌いじゃない」って言うと思うんですよね

志村正彦

フジファブリックの曲は異様にエモーショナルだ。頓狂で変質的でもある。実際に彼は好みの女性を尾け回した事があるとインタビューで語っていた。もちろん何かをしでかしたわけではないから問題ないのだけれど、そういう彼の変質性が吟の随所に現れていた。

彼の死後はどうしようもないファンが蔓延った。彼の墓の管理を仕切る輩が現れたそうだ。墓の管理なんて遺族がやるものであって、単なるファンが介入するのは明らかに異常だし、イタい。どうやら志村正彦の訃報は、そういった痛々しい人をも惹きつけてしまったようだ。

皆往々にして、終わったり死んでしまった後から騒ぎ始める。

そもそもフジファブリックはそんなに売れていなかった。CHRONICLEがオリコントップ10入りを果たし、まさにこれからという時に志村正彦は亡くなってしまった。だから痛いファンが必要以上に盛り上がってしまったのかもしれない。

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遺作となったCHRONICLEは正直駄作だと思っている。音は良いけど。

おそらく志村正彦が生きていたら、間もなく爆発的にヒットしていたと思う。サブスクとかyoutube全盛時代が到来する前に世を去ってしまったのが残念でならない。

彼の死後もフジファブリックは存続している。ギターやボーカルが急逝したバンドなんて終わってしまうのが通例だが、続投してくれた事を本当に有り難く思う。志村正彦の陽炎、山内総一郎の陽炎どちらも大好きだし、ECHOは最高の曲だ。死と終わりはイコールでは無し、バトンタッチはできる。

バンドマンと漫画家には長生きしてほしい。会社員じゃないから、自分の健康に気を遣ったりする人は少ないのかもしれない。でもファンを置き去りにして突然亡くなってしまうのはやめて欲しい。だって寂しいし、笑ってサヨナラというわけにはいかない。作品がそこで終わってしまうのは居た堪れない。

野菜も食べて、酒とタバコはほどほどに。ロックスターだからといって、不健康に生きなくても良いんじゃないか。

夭折のロッカーと言うと何となく聞こえは良いけど、寂しいものは寂しい。

今日もフジファブリックを聴いて元気を出そう。

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