『みいちゃんと山田さん』を読んで

『みいちゃんと山田さん』1巻より

最初に言っておきますが、私はこの漫画に対し極めて否定的です。

「描きたいのは、リアル感のある物語――」なんて見出しでインタビューが掲載されていましたが、リアリティは皆無でした。

当初は「実在の人物をモデルにした」としつつ、途中からは「あくまでもフィクション」と軌道修正しているあたり、軸もぶれています。

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凄惨な描画が成されていたとしても、リアリティや観察眼が圧倒的に欠如していますから、まるで響きません。

例えば、みいちゃんの「うああああーーーッ!!!!」という絶叫。

さて皆さん、何かしらグレーな人々が斯様な絶叫をして物を破壊するシーンって見たことあるでしょうか。

私はありません。

そもそも叱られる度に癇癪を起こすのであれば、キャバクラ勤めだって厳しいでしょう。

発達障害の衝動性というのは「絶叫と暴力」という単純化は不可能です。

また作中で用いられる”3″の口ですが、これは度々グレーな人々を表す記号として使用されています。

これの描き方も違和感がありまして、3の幅が広く、口角が極端に下がっているんです。記号的な表現としてもちょっとズレていると。

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泉こなたやポプ子の口が如何に上手かったのかがよく分かります。

また女性は全般的に「どこか可愛らしく、あくまでもイノセントな搾取対象」として描かれている一方で、男性は極度に醜く描かれています。

この極端な二項対立こそが、特定層の溜飲を下げるための読者を舐めた設計に寄りすぎています。

そもそもこの漫画の前身は、女性を夜の世界へと誘うようなものでした。

「若いころにパパ活で稼ぐのは効率的で良い」という風に。普通に考えて良くありません。

個人の事情や判断は尊重されるべきですが、肯定論にありがちな“パパ活は効率的で合理的”というのは明らかな詭弁ですよね。

そしておそらく作者自身、或いは“読者に投影させたい側”は、山田さんのほうでしょう。彼女は美しく、賢く、物事を俯瞰的に見る存在として配置されています。

ここに無自覚な差別意識と上から目線が潜んでおり、「自分は賢い側」と信じていたい人々の傲慢があります。

漫画としての出来は拙いと言わざるを得ず、私はこれを「リアリティのある物語」どころかSNSで見るような話としてしか認識できませんでした。

扱っているテーマが重いだけで、中身が極めて薄いのです。

一部では社会派とする声もありますが、そんな高尚なものではありません。

水商売的な価値観に立ち、可哀そうな子が悲劇的に死ぬ。

以前描いたネタが受けたものだから、100ワニ方式で「最後に必ず死ぬ」という刺激的な見出しで煽っているのです。

鬱漫画とも言われますが、表現が拙くリアリティも無いため真に受ける必要がなく、感情の機微はありません。

中身がないとなると「みいちゃんを虐待して楽しむコンテンツ」になってしまいますから、そういう反応が多数あることには必然性があります。

余談:ちなみに私は100ワニ好きでした。なんだかんだ100日間楽しませてもらったし、作風が良かったので。

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嘘と創作の境界とは?

事実として受け入れられる前提かどうかです。

面白いのか?

面白くないです。

なぜ?

SNSに転がってそうな、女衒漫画の延長だからです。

鬱漫画ですか?

メタ的には笑える漫画です。

登場人物の不幸を嗤うのは悪趣味かもしれませんが、真に受けるようなものでもありません。

SNSは悪か?

徐々に人を弱らせる毒だと思います。

目次

おわりに

発達障害という言葉は、ここ数年でとても不幸な広まり方をしたと思います。それは理解とは程遠くて、ハッタショだのガイジだの、カジュアルに消費されるだけの罵倒語になってしまいました。

この漫画も、その悪い流れの延長線上で語られているコンテンツだと思います。

これを楽しむのは自由ですが、これで障害や性産業を分かったつもりになるべきではありません。

前述のように極端な二項対立を描けば、一定の支持を集めてしまうという仕組みが出来上がっているのです。

どんな立場の人が、どんな価値観の人を狙って描いているのか。

それを理解して極度の感情移入をしなければ、フラットな評価を下せるはずです。

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