ダメギターであるジャズマスターですが、プロ・アマ問わず意外と使用者が多いです。一度はラインナップから消えつつも、近年ではプレイヤーが増加傾向にあります。独特の音と圧倒的なデザインがそうさせるのかもしれません。浅井健一氏も、「当時のデザインを超えられていない」と語っておりました。
ジャズ向けに開発されながらも、今やオルタナやシューゲイザー系のギタリストに好まれているジャズマスター。その代表的なプレイヤーを紹介します。
- 田渕ひさ子/NUMBER GIRL,Toddle,bloodthirsty butchers
- 吉村秀樹/bloodthirsty butchers
- チバユウスケ/THEE MICHELLE GUN ELEPHANT,ROSSO,The Birthday
- INORAN/LUNA SEA
- 岩寺基晴/サカナクション
- 小笹大輔/Official髭男dism
- 會田茂一
- J Mascis(J・マスシス)/Dinosaur.Jr
- Noel Gallagher(ノエル・ギャラガー)/oasis
- Thurston Moore(サーストン・ムーア)/sonic youth
- 美濃隆章/toe
- 浅井健一/BLANKEY JET CITY
- MAMI/SCANDAL
- フジイケンジ/The Birthday
- 小林祐介/THE NOVEMBERS
- 沙田瑞紀/ねごと
- すぅ/Silent Siren
- 川上洋平/Alexandros
- 小川幸慈/クリープハイプ
- 土屋昌巳
- 山本タカシ
- ヤマジカズヒデ/dip
- Nels Cline(ネルス・クライン)/Wilco
- 米津玄師
- 江口洋介
- 弦落ち対策の傾向について
- 総評
田渕ひさ子/NUMBER GIRL,Toddle,bloodthirsty butchers
国内ジャズマスターの歴史において彼女の存在は欠かせません。googleで検索すると
「田渕ひさ子 かわいい」
「田渕ひさ子 かっこいい」
の両方がサジェストされるすごいプレイヤー。飛び跳ねながらのけぞり気味でギターを弾く姿が最高にキマってます。小柄な見た目ながらでかめのジャズマスターをギャリギャリかき鳴らす激しいプレイで、彼女が複数所有するジャズマスターはピッキング跡でボロボロです。メインは65年製、サブは62年製。
ナンバーガール時代の映像を辿っていくと、だんだん塗装が剥がれていく過程が楽しめます。私がジャズマスターを購入したのは完全に彼女の影響。
※2019/2/15 ナンバーガールの復活が発表されました。
私は福岡のDRUM LOGOSに参戦してきたんですが、もっ最高でした。
吉村秀樹/bloodthirsty butchers
田渕ひさ子の夫、吉村秀樹は赤いジャパンのジャズマスター。90年代半ばの製造だそう。写っていませんがマッチングヘッドが可愛らしい。
残念ながら吉村氏は2013年5月27日、急性心不全のため逝去しました。彼のジャズマスターは形見分けで會田茂一氏の手に渡っています。
チバユウスケ/THEE MICHELLE GUN ELEPHANT,ROSSO,The Birthday
彼はデビュー当初にジャズマスターやジャガーを使用していました。ジャガーをジャズマスターと勘違いしていた話はあまりにも有名。1999年以降はグレッチをメインにしていたので、ソリッド・ギターを持っている姿自体がレアです。
私がギターをはじめたきっかけは、間違いなくチバユウスケでした。
INORAN/LUNA SEA
国内ジャズマスターの使い手としては彼をイメージする人も多いようです。私事ですが最近LUNA SEAばっかり聴いてます。
彼のシグネチャーモデルはカスタムショップ製の白で、そこそこハードなレリック加工が施されております。プリセットスイッチが横向きになっており演奏中に手が当たって切り替わってしまうことを防いでいます。素晴らしいアイデアですね。
他にはバズストップバーが標準で搭載されている点も特徴です。ヴィンテージ感たっぷりの見た目ながら演奏性を追求した仕様ですね。
岩寺基晴/サカナクション
MVではG&LのASAT Specialを使っている様子が目に付きますが、新曲の「忘れられないの」のMVでは白いジャズマスターを使用。
現段階で58歳のジャズマスターとのことなので、1961年製のジャズマスターでしょう。
ちなみにyoutubeにプロギタリストはギターで注文出来るのか?などという最高すぎる動画が上がっておりました。
小笹大輔/Official髭男dism
ヒゲダンの彼もジャズマスター使い。手にしているのはMADE IN JAPAN HYBRID 60S JAZZMASTERです。1961年製のサンバーストも所持していますが、見て分かる改造点は無し。近所のスーパーに行くとだいたい髭男が流れています。
會田茂一
YUKIや木村カエラをプロデュースしたすごい人。近年ではあいみょんへの楽曲提供なども。吉村秀樹のジャズマスターは彼が引き継いでいます。
吉村氏が取り付けていたリプレイスメントパーツやステッカーは大切に保管されているそうです。
ブリッジはムスタングブリッジを使用。
J Mascis(J・マスシス)/Dinosaur.Jr
オルタナバンドであるDinosaur Jr.のギターボーカル。白髪の長髪という一風変わった風貌ですが実際に変人だそう。Big Muffでヘヴィに歪ませた轟音が特徴です。シグネチャーモデルであるジャズマスターがSquierから販売されています。
彼の使用するジャズマスターは白色のパーツがマジックで雑に黒く塗りつぶされていますが、私はそのような雑で安価なカスタムが大好きです。
ダイナソーJr.についてですが、特定の年代の日本人であれば誰でも知っている楽曲があります。
それが「Over Your Shoulder」です。何でかというとこの曲、ガチンコファイトクラブで使われていたんです。クラブ生がボコボコにされて消沈してるシーンとか、何かが打ち砕かれたときのBGMとして流れておりました。
めちゃくちゃニッチなビッグインジャパンです。少し意味が違うか。聞けば一発で思い出せるはず。
Noel Gallagher(ノエル・ギャラガー)/oasis
私の尊敬するノエル・ギャラガーも最近はジャズマスターばかり使用。彼と言えばギブソンとエピフォンのセミアコばかり使っている印象でした。私にとっては後から使用機材が被った形なので、嬉しい誤算です。彼の機材を真似しようとしても、ES-335は高級で手が届きませんからね。
Noel Gallagher’s High Flying Birdsの新曲であるHoly MountainのPVでも堂々とジャズマスターを使用。私の中ではますますジャズマスター=オルタナの印象が深まった出来事でありました。この画像で持っているクリーム色のジャズマスターはNash guitars製ですね。
余談:Nash guitarsとは
アメリカのハンドメイドギターブランドで、エイジドギターを手がけます。ワシントン州の州都オリンピアにあるギター工房で制作され、パーツや材は選び抜かれたものが使用されています。
ボディは基本的に2ピースでラッカー塗装。ポットはCTS、ジャックはSwitchCraft、コンデンサはSpragueのOrange Dropと、高品質なパーツばかりです。
こちらがNash Guitarsの標準的なジャズマスター。エイジド加工が施され、ローラーブリッジとバズストップバーを標準で搭載しているのが特徴的です。「最初から弾きやすい」ことをコンセプトとしているだけあります。 その価格は36万円(税抜き)!もはやビンテージ並。
Thurston Moore(サーストン・ムーア)/sonic youth
ご存知ソニック・ユースのサーストンムーア。オルタナとジャズマスターのイメージを強烈に関連付けた第一人者。音作りは今回挙げたプレイヤーの中では最も複雑な音作りで、とんでもない変則チューニングで独創的なサウンドです。
数多くのジャズマスターを使用しており、そのほとんどにコントロール類を外した形跡があります。中にはピックアップセレクター以外の全てが取り払われた個体もありました。例えばジャズマスターの音が気になるのであれば、ソニック・ユースを聴けばなんとなくイメージできるかと思います。
美濃隆章/toe
toeの美濃氏は62年製を使用。音作りは繊細かつハード。ライブで見たことがありますが、ものすごいボロボロでかっこよかったです。裏面までバリバリに塗装が剥がれていたと思います。
マスタリーブリッジに変更している他、ピックアップをビンテージタイプに交換しているようです。
浅井健一/BLANKEY JET CITY
彼は昔フェンダージャパンを使用。PV中でその姿を見ることができます。激しいカスタムが施され、なんとピックアップはホワイトペンギンのフィルタートロンが移植されています。現在は片方のピックアップの音が出ないそうです。いつか真似してみたいカスタムです。
MAMI/SCANDAL
彼女のシグネチャーモデルがSquireから出ております。厳密にはジャズマスターとは異なりストラトのコントロールを搭載したストラトマスターです。
パールホワイトの塗装に独特の模様が施され、シグネチャーモデルとしては異例の売上でした。再販されたようですので、まだ入手できるかと思います。
実際かなり格好いいので私も欲しかったり。シグネチャーモデルとしては安価(6万円)なのも良いですね。FenderのCEOであるアンディ・ムーニー氏はSCANDALの音楽性を高く評価しておりました。
フジイケンジ/The Birthday
チバユウスケ率いるThe Birthdayのギタリスト、フジイケンジ。59年製を使用。他にも61年製、65年製と所有しています。プリセットスイッチとピックアップセレクターはテープでベタベタに固定されています。フロントピックアップばかり使用するようですね。
ブリッジはムスタング用に交換されていますが、オクターブチューニングが欠かせないようです。アノダイズドピックガードも格好いいですねえ。
小林祐介/THE NOVEMBERS
彼も浅井健一氏同様にフェンダージャパンを使用。Crafted in Japanのもので、比較的最近の製造。といっても2000年ぐらいです。浅井健一氏を真似てフィルタートロンを搭載。
沙田瑞紀/ねごと
彼女はフェンダージャパンを二本所持。ムスタング用のサドルに交換されています。やはりムスタング用は純正よりも若干大きいようで、弦の間隔が若干広がっています。プロの方もそのまま使っているぐらいですので、サウンドにさほど悪影響は与えないものだと思われます。
すぅ/Silent Siren
アメリカン・ビンテージシリーズの白を使用。真っ白なボディとマッチングヘッドが美しい。画像からは特別な改造点は判別できません。白のマッチングヘッドというのは珍しいんじゃないでしょうか。
川上洋平/Alexandros
65年製を使用。バズストップバーとマスタリーブリッジを併用していますね。併用している人は意外と少なく、かなり実用的なカスタムです。
併用するとかなりサウンドのキャラクターが激変するというのは商品レビューでもしばしば指摘されています。いかにもサスティンが伸びそうな組み合わせですね。
小川幸慈/クリープハイプ
白い62年製を使用。マスタリーブリッジに交換されています。側面と背面は塗装がボロボロです。ビンテージの風格漂う白が美しい。ブリッジはマスタリーブリッジに交換されています。ここまで列挙して、ジャズマスターは3トーンサンバーストに次いで白が人気なようですね。マスタリーブリッジに交換している人が多いことから信頼性はお墨付き。
土屋昌巳
彼のジャズマスター偏愛っぷりはものすごく、ネジ一本にまでこだわっているそう。62年製で、浅井健一氏の手にも渡ったことがあるらしいレアな個体です。ダメなブリッジでさえお気に入りなようで、純正をそのまま使っています。
山本タカシ
槇原敬之やハナレグミのサポートで知られる、生粋のギタリストである彼はブルーのジャズマスターを使用。ジャズマスターはソリッドカラーも格好いいんですよね。目立つ改造点としては、ブリッジとテールピースの間にスポンジを挟んでいることですね。ここがキンキン鳴るのがジャズマスターの特徴ですが、雑音でもありますので対策する人が結構居ます。
ヤマジカズヒデ/dip
主に65年製を使用。サーストン・ムーアの影響で変則チューニングが好きなんだとか。私はSonic Youthの曲をレギュラーチューニングでコピーしようとしたことがありますが、無理でした。
Nels Cline(ネルス・クライン)/Wilco
アメリカのオルタナティヴ・ロックバンド、ウィルコの彼はジャズマスターの雄。何せマスタリーブリッジは彼のためにデザインされたものです。60年製だそうで、塗装の殆どが剥がれ落ちているのが特徴。彼はプリセットトーンを使うそうです。何故かヘッドにはハローキティのシールが。
米津玄師
彼が使用しているのは2011年に50本限定で販売されたINORAN Jazzmaster #1 LTD、カスタムショップ製で55万円です。プロの方が他のプロのシグネチャーモデルを使っているのは存外に珍しいのではないでしょうか。
2011年に発売された50本は時はINORAN本人が検品を見に行って、その全てを手に触れたそうです。少なくともINORANが一度触れたという付加価値がありますね。
ちなみに同モデルは2019年にも50本限定で再生産されていますので、まだ入手できるかもしれません。
後に日本製も発売されています。カスタムショップ製なんて誰でも買えるわけではないので、手の届く価格でラインナップされているのは有り難いことです。
江口洋介
なんと俳優さんからもジャズマスターの使い手が。
弦落ち対策の傾向について
主に施されている原落ち対策は3つ。ムスタングブリッジ、マスタリーブリッジ、バズストップバーの使用ですね。ムスタングブリッジはアジャスタブルだったりレトロトーン製だったり色々あります。またこれらを併用するということも考えられますね。
私のジャズマスターは現在マスタリーブリッジとバズストップバーを併用している状態で、弦落ちは絶対に起きません。これで弦落ちさせるほうが難しいぐらい。
ただそこまで行くと少々やり過ぎ感があり音も硬くなりますので、自分に合った対策を取れば良いかと。個人的にはマスタリーブリッジだけで十分です。まあマスタリーブリッジは高いので、先にムスタングブリッジを試すのが良いかと思います。
総評
発売された当初はマイナーギターでしたが、どういうわけか現代のバンドマンに人気が出たジャズマスターでした。私の印象としては今時の邦楽ロック、それもフロントマンに特に好まれている気がします。田渕ひさ子の印象も強く、女性にもよく似合いますね。ここに挙げた中に好きなギタリストが居た方はラッキーです。すぐに買いましょう。
ちなみに私はジャパン以外を購入したことがありませんが、いつかはUSAも購入しようと考えてます。とはいえ著名なギタリストにジャパンの使用者が思いの外多いことを考えると、ジャパンは単なる廉価版でなく独自の良さがあることが伺えます。
ブリッジを交換している人が多いですが、圧倒的に多いのはムスタングサドル、次点でマスタリーブリッジ、バズストップバーですね。あるいはそれらの組み合わせです。私のオススメは断然マスタリーブリッジ、次点でモントルーのムスタング用アジャスタブルサドル。実際マスタリーブリッジが最強ですが高いので、ムスタング用で済むのであればそれに越したことはありません。
ムスタング用は個別の弦高調節ができるものと出来ないものがありますが、私の知る限りプロは弦高調整できないタイプを使っている場合が多いですね。一長一短ありますので好みで選びましょう。
ちなみにギターマガジンのジャズマスター特集のバックナンバーはKindle Unlimitedで無料で読めます。
コメント