私のジャズベースははカスタムショップ製でありながら、素人の手でゴリゴリに改造されておりもはや原型を保っていませんでした。元々は普通のジャズベースの回路でしたが、友人の手でコントロール類が全て摘出されていたのです。
こうなってくるともう歯止めを失って、色々試したくなる性分です。新品だったら余計な事はしたくないですけど、私の手に渡った時点で散々いじった後ですからね。
因みにコントロールが一切ないベースというのはミュージックマンのジョー・ダートモデルに実在しますので、そんなに突拍子もないカスタムという事は無いです。コントロールの少ないギターがもっと増えれば良いんですけどね。
友人から譲ってもらった時にSONICのターボ回路も一緒に貰いましたのでとりあえず取り付けましたが、この音がいまいち気に入らず。というかフルアップポットがあんまり良いと思いませんでした。
これならカスタムショップ純正のCTSの方が良いだろうと思って純正戻しを決意。しかしシリーズ接続は捨てがたかったので、プッシュプルポットとキャパシタだけ社外品を買って他はすべて純正部品でターボ回路を実装しようと計画しました。
配線図について
色々参考にした結果この配線で行こうと思います。トーンポットにプッシュプルポットを割り当てるやり方ですね。これで通常時は普通のパラレル接続、プルアップでシリーズ接続になります。シリーズ接続時はリアピックアップのホットとフロントピックアップのコールドが繋がるのです。
赤と白がホット、黒をコールドとしています。上側のポット同士を結ぶアース線なんですけど、これはプッシュプルポットのボディ側面にはんだ付けしました。要はアースなんてポット本体のどこでも良いため、はんだ付けが一箇所に集中するのを避けるためにそうしました。後の画像でご確認ください。
使用する工具について
はんだごては絶対セラミックヒーター式の温調機能付きが良いです。温まるまでが早いですし、温度調節は非常に便利です。一時的に高火力にしたり、デリケートな部品に対しては300度ぐらいに落としたりと柔軟性の高い作業が可能です。
温度固定式なら30Wくらいの出力があれば問題ないでしょう。温度が高すぎる時は濡れスポンジで拭って作業することになると思います。
見落としがちですがはんだごてスタンドと耐熱スポンジは絶対に必要です。スタンドに立てておかないと動き回って危険です。またスポンジでコテ先を拭って清潔に保ちながら作業すると仕上がりが良くなります。
当たり前ですがハンダが必要です。0.8mmか1.0mmで良いと思います。ギターの回路なら1.0mmで問題無いですが、私はプリント基板にも使うので0.8mmを使っています。
有名なケスター44の組成はスズ60%、鉛40%です。組成が同じなら大差無いかと思いますので、ヴィンテージのハンダに拘ったりはしていません。
吸い取り線も必須です。これがあれば失敗してもハンダを除去してやり直すことが可能。
フラックスは絶対に使ってください。酸化皮膜を除去し、はんだの表面張力を抑制します。要するにめちゃくちゃ綺麗に仕上がりますので、ヤニ入りはんだであっても使用をおすすめ致します。
パーツを取り外す
とりあえずノブとナットとコントロールプレートのビスを外します。
配線を引っ張り出して外していきます。はんだ作業中の写真を撮るのは困難ですのでご容赦ください。時間が経ったはんだは溶けにくかったりするのでフラックスを予め塗ってから加熱すると溶けやすくて良いです。
ピックアップと繋がっている箇所だけを外しました。これがSONIC ( ソニック ) / TJ-201 TURBO J-BASS 2 USA。既製品だけあって配線はとてもキレイですが、音はあまり気に入ってませんでした。何かしらの相性が悪かったのか、音がやけに細く感じたこととフルアップポットの感度が今ひとつだったんですよね。悪い製品ではないと思いますが。
で、ジャズベースのターボ化に必要な部品はプッシュプルポットとキャパシタ(コンデンサ)だけです。ポットはAカーブの250Kを選択。キャパシタはオレンジドロップの0.22μFを選択。別に音とか分からないですけど、ギターにおける電子部品は定番品が無難です。
クロスワイヤーの被覆の剥き方について
なんとなくですがクロスワイヤーを使用。オールパーツのこれはすごく良かったです。編み込みは細かく、手触りからしてワックスコーティングされていますね。適度なコシがあって扱いやすいです。
クロスワイヤーの被覆は縮めて露出させれば良いんですけどね。ただ大きく露出させたい場合はやはり切り取らないと不恰好です。カッターナイフで転がすようにして、被覆に一周切れ目を入れればきちんと剥けます。普通のビニール被覆と変わりませんが少々慣れが必要です。
配線
何度かやり直した後こうなりました。ジャズベースのキャビティに対してオレンジドロップが大きく、収めるために少々の工夫が必要でした。脚を短めに切ってポットに寄せています。軽く折り曲げても問題ないでしょう。
配線図通り、ポット同士のコールドはきちんと接続しています。ポット側面からジャックのコールドまで一直線に伸びている黒いワイヤーがそれです。また少々分かりにくいですがプッシュプルポットは側面に出っ張りがあるのでそこに接続。
これはノーマルのジャズベースだと省略されている場合が多い箇所。コールド(マイナスのことです)同士は全て電気的に繋がってキャビティ内のシールド等を介して弦と繋がっている必要があります。
ジャズベースの場合はポットとジャックのコールド(金属のボディ自体がコールドです)側が金属プレートを介して弦アースと繋がっているため、フェンダーがそれで問題なしとしてコールド線を省略しているのです。
実際にはコールドを省略すると問題ありまくりでして、例えば金属プレートが汚れたりポットのナットが緩んだりした場合、導通が悪くなってしまいます。そうするとノイズが増えたり弦に触れてもノイズが消えないという症状が出てきますので、やはりコールド同士はワイヤーをしっかりとはんだ付けして接続するべきなのです。
というわけで完成。特に失敗もなく、カチッと引き出せばシリーズ接続になる回路の完成です。もちろんプレベとは似て非なるものですが、プレベ寄りの太い音が出力されるようになります。
これを標準搭載したベースも多いですから実用性は疑いようもなく、ちょっと重めのサウンドが欲しい時に気軽に切り替えられて便利。パーツ代は2000円程度、極めてお手頃なカスタマイズです。
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