ギタージャズマスターの弦落ち対策

愛すべき欠陥ギター、その名はジャズマスター

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注:私はジャズマスターが大好きで、これまでにフェンダージャパンのジャズマスターを二本購入しています。

私が思うに、ジャズマスターは稀代のダメギターです。

そもそもエレキギターとは工業製品ですので、完成した状態で我々消費者の手元に届きます。つまりメーカーが設計・生産した量産品であって、欠陥品なんてあるはずがないというのが以前の私の考え方です。

しかしそれは大きな間違いであったとジャズマスターを手にしたことにより実感しました。これ欠陥品だ。

今回は敢えてジャズマスターの欠陥にフォーカスして、「ジャズマスター固有の欠点」を語ります。

弦落ちがひどい

そもそもどこが正しい位置なのだろう。

哀れ、6弦と1弦が脱落したジャズマスター。例えばサビ前で盛り上がってちょっと強めに弾いただけで落っこちます。

ここの進入角度が浅すぎる。

ギターの弦はナットとサドルの二点間に張られていますね。この基本的な部分にジャズマスターの欠陥が集約されています。

テールピースからサドルへの弦の侵入角度が浅すぎるせいで弦のテンションが極端に低く、それが弦落ちの原因です。弦がサドルに軽く乗っかっているだけの状態なんですね。

テンションが不足すると弦落ちだけでなく、不快なビビリ音も発生するので弾くのが大変です。

現実的には、ジャズマスターが発表された時代は今よりも弦のゲージが太くテンションが稼げたためあまり問題にならなかったようです。細めの弦がスタンダードとなった現代特有の問題と言えます。また元々ジャズ向けでハードピッキングを想定しておらず、ロックやブルースで使われるようになった事も一因です。

つまりエリクサーなど硬めの弦を張れば多少は改善しますが、あまり根本的な解決になっていません。

これに関してはバズストップバーを装着することで、ビビリと弦落ちが一挙に解決します。上から弦を押さえつけてテンションを稼いでいるわけですから。無加工で取り付けられますから試してみるのも良いかと思います。昔は8,000円くらいするALL PART製しか無かったのですが、最近は安いものも出ています。私も現在はバズストップバーを装着しており、弦落ちは皆無です。ただしテンションが高くなる事に伴いかなり音が固くなることと、見た目の問題で好みが分かれる所だと思います。

またUSA製にはネックポケットにシムが入っておりネック角がついていますが、ジャパンはシムが省略されているためネック角が浅いです。そのためジャパンの方が弦落ちしやすいのですね。フェンダージャパンはコストダウンの産物でもあるため致し方のない所ですが、正直そこは省略しないで欲しかった!

私のジャパンのジャズマスターはESPのネックシムを仕込んでいるためネック角がついています。それでブリッジ高さを上げれば弦落ちはある程度治りますので、抜本的な解決を望む方にはシムを推奨します。

ジョニー・マーのPVで、弦落ちしたジャガーがばっちり映っていたのは思わず笑ってしまいました。誰が弾いてもそうなんですね。

とっても浅いサドルの溝

スパイラルサドルはめちゃくちゃ弦落ちする。

弦が乗っかるサドルには弦が迷子にならないように溝が掘ってあります。サドルの溝が無いギターも結構ありますけどね。ストラトとか。それはそれで結構な問題です。

ジャズマスターのサドルはネジを切断したような構造で、浅い溝がたくさん掘られています。正式な名称をスパイラルサドルと言います。

弱すぎるテンションと浅すぎる溝が組み合わさって、余計に弦落ちしやすくなっています。落っこちたら戻せばよいのですが、よりによってたくさん溝があるためどこが元の位置なのかわからなくなってしまいます。まあ弦間の調整ができると捉えることもできますけど・・・。

誰がこんな構造を考えたのでしょうか。レオ・フェンダー本人?

ちなみにジャズベースもジャガーも同じ構造であるあたり、よっぽど自信のある設計だったのかもしれません。

抜本的な弦落ち対策としてはサドルやブリッジの交換が考えられます。典型的なのはムスタングタイプのサドルで、一本の深い溝が通っているため弦が迷子になる心配がありません。最近は激安品も出ています。

究極のソリューションはマスタリーブリッジで、プロにも愛用者が多数。溝は深いV型で弦落ちは皆無です。またサドルが大きな塊となったことでサスティンが伸びます。しかし高額であることや、元の音とは結構変わってしまう事がデメリット。私はマスタリーブリッジとバズストップバーを併用しており、ジャズマスターとはかけ離れた固い音とロングサスティーンになっています。

すぐに緩んでくる弦高調整用イモネジ

弾いていると飛び出してくるイモネジ。いい加減にしてほしい。

ジャズマスターのサドルは1~6弦で独立しており、別々に弦高とオクターブチューニングを調整することができます。2つのイモネジで高さを調整するのですが、これが演奏中にゆるんで飛び出てきます。ちょっと激しく弾いた後だと目に見えて飛び出てます。

勝手に弦高が下がるとビビリが出てきますし、手に当たってちょっと痛かったりするのです。放置しているとそのうち無くすので、ネジロック剤などで対策しましょう。ネジロック剤には強度があり、サドルのゆるみ止め程度なら低強度で十分です。中強度でも強すぎるくらいで外す時に苦労しました。その場合はドライヤーで温めれば外しやすくなります。

またイモネジが無いタイプに交換することも考えられます。各弦ごとの弦高調整はできなくなりますが安定性は増しますね。

複雑なトーン回路

コントロール多すぎじゃない?

ジャズマスターは最上位機種という重い十字架を背負って開発されたため、他のギターにはない新機能が数多く搭載されています。その筆頭がプリセットスイッチです。

プリセットスイッチをONにすると、強制的にフロントピックアップのみに切り替わり、マスターボリュームとトーンの設定が無視されます。この時効くのはボディ左側のプリセットボリュームとトーンです。

つまり、予め設定しておいた音にスイッチ一つで切り替えられる、という機構ですね。しかし微妙に複雑な機能であったためか、積極的に使うプレイヤーはあまり居ません。使わない機能は回路にとって無駄な抵抗でしかなく、取り外されてしまうこともしばしば。

とはいえプリセットONでトーンを絞るとかなり丸い音が出ますので、ソロとかで使えなくもないかも?これも音的にジャズ向けの機能なんでしょうね。

当時のギターの傾向として、上位機種ほどコントロールが多いです。テレキャス→ストラト→ジャズマスター→ジャガーと進化する中で、どんどんコントロールが増えていってます。

演奏中に頻繁に切り替えることを想定していたようですが、演奏中にコントロールを触ることってそんなにあります?ピックアップセレクターですら演奏中には触らないですよね。

スイッチング奏法やヴァイオリン奏法なら別ですけど。

土屋昌巳氏はスイッチング奏法による高速カチカチでセレクターを壊してしまったそうな。

ちなみに、予めプリセットボリュームを0にしておけばキルスイッチ代わりに使えます。これはこれでちょっと便利。

コントロールスイッチの位置

ジャズマスターに限った話ではありませんが、スイッチ類の位置が絶妙に悪く演奏中に手が当たってしまいます。プレイヤーによってはスイッチに紙を挟んだりテープで止めたりして固定するのですが、やればやるほど不恰好になってしまうのがジレンマです。

ノブが手に当たる場合は外してしまうというのも手。ノブの位置はストラトよりはマシかもしれない。

あえてグラグラのブリッジ

マスキングテープで軸を太らせて固定した。

ジャズマスターのブリッジは安定したアーミングのために、あえてグラグラです。アーミングの動きに追従して前後に動くという機構です。

しかしアームを使わないプレイヤーにとってはチューニングが狂ってしまうだけの無駄な機能であり、これまた固定してしまうプレイヤーが多いのでした。

ちなみにこれもほぼ0円で対策できて、カタカタ動くブリッジを前後どちらかに寄せてから弦を張るだけです。遊びの部分を最初から潰してしまうんですね。

これでブリッジ由来のチューニング狂いはほんの少しマシになります。もっとちゃんとした対策としては、ブリッジの足にアルミテープやマスキングテープを巻くというのがあります。

フェンダーのギターは全体的にブリッジ周りの設計がルーズです。

合わないチューニング

ヴィブラートユニットの欠陥というよりは仕様でして、とにかくチューニングが合いません。6弦から1弦までチューニングして、6弦まで戻ってくるとめちゃくちゃズレているのです。

弦を締めていくと、ヴィブラートユニットのバネが縮んできて、他の弦の音が全部下がる・・・といった具合で、要は弦の張力とバネの張力が釣り合うまで繰り返しチューニングする必要があるのです。

体感的には3往復ぐらいするとようやく合うぐらいのイメージ。

それでいざアーミングをするとグラグラブリッジのおかげで一発でダメになりますからもうお笑い。

細かいピッチを気にしているようではジャズマスターは弾けないのです。

まとめ

ストラトキャスターの進化系として登場したジャズマスター。ストラトというのは実に優れた設計でとても弾きやすいのですが、当時の感覚で言うと上位機種=多機能であるというのが常識だったようです。

その結果ジャズマスターにはフラッグシップらしく斬新なアイデアと機構がふんだんに盛り込まれてましたが、残念ながらそれらは「無駄な機能」 でしかなく、無残にも新機能の殆どはユーザーの手によって封印されてしまうのでした。

そんな機能でも当時は良かれと思って搭載されていたというのが面白いですよね。だってわざわざコストをかけてダメにしているんですから。紹介した通りほとんどの機能がダメダメで、非常に手のかかるギターだということがお分かりいただけたかと思います。

ここまで言っておいてなんですが、私は数あるエレキギターの中でジャズマスターが一番好きです。個性的なサウンドと圧倒的なデザインが全ての欠陥を帳消しにしているんですね。

ギターをカスタムする楽しみを与えてくれますし、欠点とそのまま付き合っていくという方法もあります。ジャズマスターの代表的なプレイヤーである田渕ひさ子さんもこうおっしゃってます。

「あのめんどくさいブリッジと付き合っていってほしいな。ははは。」

田渕ひさ子

欠陥を全て直してしまうのではなく、ある程度受け入れた上で弾くという選択もあるのです。Jマスシスも同じようなことを言っておりました。

「フェンダーのギターは弾くのが難しい。それが好きだ。」

Jマスシス

彼女らほどの腕前であれば、ギターの素養を全て受け入れて昇華することができるのでしょうね。やはりギターは弾き手次第ということです。初めてのギターに悩んでいる方、臆することなくジャズマスターを買いましょう。買えば後はジャズマスターが教えてくれるはず。

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