
この商品、『ベリンガーのケンタウロス』としか言いようがない。
「CENTAUR OVERDRIVE」という名称で、何から何までソックリ。
筐体は元のデザインのまま圧縮したような形で、そこがウケた。
何より、お手頃なブランドとしての地位を確立しているベリンガーだからこそ、人々の琴線に触れたのである。
エフェクターの回路には商標といった権利がないから、パクりパクられが常だ。
しかしこの製品、やってしまった。
ロゴやイラストまでそのまんまパクったものだから、本家に怒られてしまったのである。

というわけでさっさとデザインは変更され、リイシューされることとなった。
そうなると必然的に、本家とソックリな旧版はレアになってしまう。
狼狽して、高値で買ってしまった人々が既に観測されている。
私は極めて冷静に、サウンドハウスの在庫が復活してすぐに購入したため、旧版を定価で入手できた。

既に旧版のページ自体が削除され、絵柄が変更されたバージョンに置き換わっている。
また公式サイトでは、在庫には新旧Verが混在していることがアナウンスされている。
音について
よくあるケンタウルスクローンである。
バッファード回路を搭載し、自然なオーバードライブ感を実現。高域も耳に痛くなく、全域にて使いやすいサウンドである。
トレブルを削ると、嫌なハイとホワイトノイズだけがうまいこと消失する。
まさしく、繋ぐだけで良い音を獲得できるという便利アイテムだ。
しかし、本家と違って厳選したパーツを使っているわけではないから、ビル・フィネガンの理想とするサウンドとは程遠いだろう。
安価でうまく再現したクローンペダル、と考えるのが妥当である。
品質について

筐体はしっかりした金属製。ゴールドの塗装も美しく、ムラやキズは無い。
インアウトは安物にありがちな、プラのブッシングを介したもの。
DCジャックは基板直付けで奥まったタイプだ。正直ショートしやすいので好きではない。
ノブはとても安っぽく、白い塗装がはみ出している。
またトルクが全然違って、私の個体はGAINがスカスカだった。
フットスイッチは私の嫌いな、グニャっとした踏み心地。リリースした時にオンになるタイプである。
TC製品も同様で、安物にはこのタイプが使われがちだ。

裏蓋を開けてみると、使いやすいバッテリースナップとホルダーが付いている。未使用のスナップはホルダーに固定できる方式だ。この気配りがベリンガーらしい。
総括
創始者のベリンガー氏も言っていたが、中国で生産するにあたって品質管理はとても大変との事だ。
指定した作業手順が守られず、内部の人間が管理現場に立つことになったという。
その甲斐あって、外見はよく出来ているし、音も良い。
しかしそれは、ビル・フィネガンの理念と回路設計が素晴らしいためであって、ベリンガーの手柄ではない。
我々が実物のケンタウロスを入手するなど不可能だし、それがビル・フィネガンの利益になるわけでもない。
ケンタウロスは、とても不遇なペダルである。
我々は、クローンを使わざるを得ないが、本家へのリスペクトを忘れてはならない。
しかし何故、ベリンガーはこのような炎上商法みたいなことをしてしまったのだろう?
元のブランド力があれば、全く別のロゴや名称を使っても売れたはずだ。
正直私の中では、今回の件でベリンガーは株を下げた。