グレッチはフェンダーやギブソンに比べて情報が少ないですよね。高コストで扱いづらいアーチトップギターがメインであるグレッチは、ソリッドギターをメインとする他社よりもシェアが低いのは仕方のないことです。その点製造コストを抑えるための設計を仕込んでいるフェンダーは流石です。余談ですが、横山健公式サイトの情報量は素晴らしいですよ。
情報の少なさを嘆いていても仕方がないので、折角グレッチオーナーになったのですから細部を紹介していきます。購入を検討している方の参考になれば幸いです。あとグレッチはパーツの単価がスペシャルに高いので、そこも併せて卑しく紹介します。
そもそも6120はチェット・アトキンスのシグネチャーモデルとして、1954年に登場しました。グレッチといえばホワイトファルコンが有名ですが、代表的なギターは6120でしょう。後にナッシュビルというペットネームが与えられます。
こちらは私が購入したG6120-1960。ぱっと見て色とパーツが綺麗だったのが目を引きました。特別定額給付金やその他の収入が重なったので、買っちまうか~という感じで購入。
買ってからというもののほとんど毎日弾いておりますので、ギターを買うことによって上達しようとするというのを実践中です。置き場所を確保するために、部屋を片付けたりしましたしね。ギターで生活改善です。
ケースのロゴはGアロー。ケースだけというのはほとんど売ってないようですね。50000円も出せば入手はできるでしょうが。購入時はケースがセットになっているものを選びましょう。
ヘッドにはホースシューインレイ(馬蹄)が。カントリー向けを強調しているわけですね。ウェスタンモチーフのインレイよりこっちの方が好きです。
トラスロッドカバーは1650円。アーティストのサインが入っていると11000円。高い。カバーのネジはマイナスでビンテージっぽさを演出。実際には回しにくいんですけど、見た目は大変かわいらしい。1959~1960年頃はマイナスネジが多めに使われています。
ヘッド形状はスモールヘッドで、1957年頃まではラージヘッドでした。こちらのほうが精悍な印象で好みです。
特に気に入ったのがペグです。11000円。ペグボタンのまんまるな形と、クラシカルなオープンギヤタイプというのが良いですね。紹介するパーツ全般に言えますが、金色のパーツは金メッキのコスト分高くなります。金メッキパーツだけは命を賭して守りましょう。
今となってはあまり意味のないゼロフレット。ナットの加工精度が低かった時代の名残だそうな。あるいはナットの消耗を避けようとしたんだとか。開放弦と押さえた弦の響きが均一になるなどの効果も見込めます。正直私にはよく分かりませんが、「案外良いんじゃないかな?」ぐらいには感じております。
ポジションマークは薄く小さく仕上げられた、ホワイトパールのハーフムーン(サムネイル)インレイ。グレッチが言うにはエボニー指板のサウンドは素晴らしいそうで、それを邪魔しない最小限のデザインがこのハーフムーンなんだとか。この控えめな感じがたまりません。真っ黒なエボニー指板によく映えていますね。
エボニーとは黒檀の事で、最近は質の良いエボニーが入手しづらくなっているとの事。それどころかアッシュやローズウッドなどのメジャーなギター材も減少傾向です。フェンダーもアッシュ材を使用したモデルを縮小しました。木を大切に。
サイドドットポジションマークは赤。これは手に取ってみるまで知りませんでした。こういう細かい部分で他のギターと差別化しているのは嬉しいところ。
グレッチはこんなところまで専用パーツです。雄雌セットで2200円。高すぎ。ストラップを挟んで段付きナットを締め込むという、着脱の手間を全く考慮していない男らしさです。しかしこれ、頭のサイズがそんなに大きくないのですっぽ抜けそうです。対策が必要ですね。
個人的には、ギターってちょっとおちゃめな部分があった方が良いと思うんですよね。あんまり全部がカッコ良すぎると、嫌味な感じになってしまう気がするんですよ。6120におけるおちゃめポイントはこの看板ロゴで、これが全体の印象を和らげています。無いモデルもありますけど・・・。
ホワイトファルコンも、あのカッコいいんだか悪いんだか分からないハヤブサのイラストがいい味出してますよね。ピックガードのブラケットは4400円、ピックガード本体は在庫がないので不明ですがおそらく13200円。透明なアクリル板の裏からメタリック塗装をしていて綺麗です。表面に厚みと距離感があるんですよね。ブラケットのネジはマイナスで、クラシックな見た目を演出。
ブリッジはバーブリッジで、木台はローズウッドですね。ブライアン・セッツァー曰く、バーブリッジが一番音が良いそうな。単なる金属の塊ですからロスが少ないんでしょうね。当然の如くオクターブチューニングは絶対に合いませんので、1弦と6弦だけ合わせて斜めに置くしかありません。
ブリッジを交換できるのかどうか調べてみたのですが、バーブリッジとスペースコントロールブリッジには互換がありそうです。TOMタイプのアジャストマチックブリッジに変更する場合は、木台ごと交換する必要があります。
バーブリッジ用木台のナットホイールは20mmですが、アジャストマチックブリッジ用木台のナットホイールは15mmです。バーブリッジは12100円、ローズウッドの木台は6050円。高い。ちなみにこのブリッジはジャズマスターのようにビグスビーに追従して前後にカタカタ動きます。効果の程は不明。
木台はボディのアーチとすり合わせをして、個体番号をつけて管理しているそうです。つまりはギター一つ一つに専用の木台が使われていると。そのためブリッジないし木台交換のハードルは案外高く、交換時にはすり合わせ作業が必須になります。購入する際には妥協するべきでないポイントですね。
私は正直TOMタイプと悩みましたが先程のブライアン・セッツァーの発言と、愛好家が多いということでバーブリッジに決めました。無骨な見た目が気に入ってます。
グレッチのピックアップは主にダイナソニックとフィルタートロンがあって、シングルコイルとハムバッカーという棲み分けです。6120の初期はダイナソニックでしたが、1958年からはフィルタートロンが搭載されています。私は完全に見た目で選んだため音にはこだわりませんが、ハムバッカーであるフィルタートロンの方がノイズに強いです。
エスカッション(ベゼル)が付いていますが、ギブソンなどと違って完全に飾りです。ギブソンはボディにエスカッションを搭載してそれにピックアップをマウントするという構造ですが、グレッチはただ枠として付いているだけ。無くても問題ありません。
おそらく素材はアクリルで、ピックガードと同様に裏からメタリックで塗装されています。ネジ穴の周辺が割れていることが多いので、購入時は確認したほうがいいかも。
ビグスビーの型番は非常に分かりやすく、G6120にはB6が搭載されています。22000円。グレッチロゴ入りでVカットのGT292 B6は38500円もします。それの金メッキだと51700円!おそらく一番高いパーツではないかと。ブリッジと並んで購入時には吟味したい部位ですね。
コントロールは一見分かりづらそうですがそうでもありません。右上がマスターボリューム、右下からフロントボリュームとリアボリューム。左上からピックアップセレクター、トーンスイッチ。トーンノブが無い代わりにスイッチになっているんですね。3パターンのトーンに切り替えられ、センターがノーマル、フロントがローを強調、リアがハイを抑えます。正直使わないと思いますが、私は使いもしないコントロールがゴチャゴチャ付いたギターが好きです。
ノブも全て金色。コントロールノブは2970円、スイッチノブは1595円。殆どのパーツが金色ですが、本体がオレンジなので綺麗に馴染んでいるんですよね。ちなみにピックアップセレクターは5500円、トーンスイッチは6600円でノブは別売りです。トーンスイッチにはキャパシタが2つついてますのでその分コスト増ですね。
最後に中身です。こればっかりは買うまで意識していなかったんですが、グレッチの内部にはブレーシング(力木)が走っています。トップとバックを繋ぐ重要な役割を果たしており、形状にいくつかの種類があります。
グレッチで代表的なのはトレッスルブレーシング。トップとバックを二本の橋で結んでいて、それぞれに二本脚が生えているため計4点で接触しています。近年のプレイヤーズエディションなどでは脚の本数を減らしたMLブレーシングが採用されていますね。
私のG6120はそのどちらでもない「パラレルブレーシング」でした。トップとバックを一本の魂柱で繋ぐ、超アコースティックな作りです。聴き比べたわけではありませんが、非常に重厚で豊かな鳴りです。爆音とも言えます。
ここまで各部とパーツの価格を紹介してきましたが、すごい値段でしたね。金額や見た目からして、まさしく宝石のようなギターです。気軽にパーツ交換なんてできそうもありません。中古購入時はオリジナルパーツを欠損していないものを選ぶべきですね。他社のパーツに換えるとしても、元のパーツを失くすべきではありません。
ただ高価だからといってあんまり過保護にしても道具としての価値を失ってしまいますので、ちゃんと弾いていこうと思います。何せ初めてのアーチトップなフルアコなので、毎日触っても飽きません。ただ音がバカでかいので家では気を遣います。早くスタジオで思いっきり鳴らしたいですね。
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