ノンタンシリーズといえば誰もが知る名作だが、その中でも「ノンタン テッテケむしむし」は異彩を放っている。何とこれ、「バンドもの」なのである。
もちろん絵本らしいファンシーな構成になっているのだが、導入部のあまりのリアルさに私は度肝を抜かれた。
ノンタンがアンサンブルを無視したギタープレイを行った結果、バンドをクビになってしまうのである。
ノンタンが使うのは赤いモズライト、バンド名は「のんちゃ~ず」。
他の機材も実在するものばかりで、そこに説得力があるのだ。
ノンタン

使用しているのは、何とモズライト・マーク1。「モズライトっぽい何か」でなく、「モズライトそのもの」である。ヘッドのロゴこそ加工されているが、見開きでもバッチリ紹介されている。
これはサイドジャック仕様であるため、初期型であると考えられる。
ノンタンの宝物であり、これ以外にも何度か登場している。

ノンタンは情熱的なリードギタリストであり、そのノイジーなプレイングは圧巻。
しかしドラムのぶたさんは目ざとく、ノンタンのファッキン・テンポを見逃さなかった!
哀れ、ノンタンはクビを宣告されるのであった。
たぬきさん
たぬきさんは、リズムギターを担当する。彼の明るい性格が、バンド内の人間関係を良好に保っているのは間違いない。
彼が使用するのは、ヤマハのSG-7、いわゆるブルージーンズだ。60年代の国産ギターとしては、名の知れたモデルである。
くまさん
くまさんは、ベース担当。その巨体から繰り出すグルーヴは圧巻であり、日本人離れしたファンキーなプレイには定評がある。
愛機はなんとグヤトーンのEB-7、シャープ5ベース。しかもレフティ。正真正銘のビザール使いである。
ぶたさん
ぶたさんはドラムを担当する。主にグレッチ・ラウンドバッジのドラムセットを愛用している。
技巧派のドラマーであるが故に、メンバーに対する要求も厳しいのであろう。
ノンタンのスタンドプレイを認めず、クビを宣告したのだった。
うさぎさんたち
三つ子のうさぎさんは、コーラス隊。実は一人が男の子、二人が女の子。
三人ものコーラスを抱えているあたり、このバンドはかなりリッチなサウンドであることが推測される。
コーラスの無い曲では、おそらく舞台袖に引っ込んでいるはずだ。
まとめ
この絵本の初版発行は、1997年。そう極端に古いわけではない。
しかし登場する機材は全て1960年代のものばかりだ。
何故そんなに古く、ビザールな機材ばかりを登場させたのだろう。
おそらくだが、ノンタンの世界に相応しい、可愛らしく個性的な楽器を選定していった結果そうなったのではないだろうか?
ちなみにこのエピソードは3Dでアニメ化されており、全く同じ赤いモズライトを持っている。
これだけの一貫性を持っているわけだから、断じて適当に描かれているわけではない。
そこが物語に深みを持たせているのである。
イントロはかなりリアルなバンドものだが、そこはノンタン。
後半は絵本らしいファンシーな展開が待っているので、実際に手に取って確かめて欲しい。
ノンタン全般、きちんと伏線が張られているし、更にメタフィクション要素もある。
しっかりと描かれているからこそ、親子二世代で楽しめるのだ。
だから大好き、ノンタン。
キヨノ サチコ氏のことを、決して忘れない。
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