ムスタングとは馬の名前。スペインから持ち込まれた小型の馬がアメリカで野生化したものをそう呼びます。
小柄ながら人に懐かない暴れん坊な性格は、まさにギターのムスタングそのもの!
発音はマスタングの方が近いですが、日本では慣例的にムスタングと呼びます。
スチューデントモデルということで登場しましたが、ムスタングの下にデュオソニック、更にその下にミュージックマスターがありますから実際には中級機だと思われます。
見た目は小柄、ポップなカラーリングでいかにも可愛らしい感じですが凶悪性も併せ持ちます。無駄なフェイズスイッチや使うと一発でチューニングが崩壊するトレモロユニットなど、結構トンデモなギターです。
そんなある意味とってもフェンダーらしいギターであるムスタングの使用者を紹介します。
中野梓
いきなりのアニメキャラ!私の世代だとムスタングといえば彼女を連想してしまいます。赤いマッチングヘッドのムスタングでおそらくフェンダージャパンのものであると推測されます。ちなみに白ペグ。
色については諸説ありますがCAR(キャンディ・アップル・レッド)かOCR(オールド・キャンディ・アップルレッド)のどちらかです。仕様から考えるとOCRの可能性が高いのですが、個人的にはCARの方が劇中に近い気がします。
因みにけいおん放送当時はフェンダーのラインナップに赤のマッチングヘッドのムスタングは存在しませんでした。先に島村楽器と石橋楽器からあずにゃん仕様が別注され、その後フェンダージャパン本家のラインナップに加わったという経緯があります。
Char
日本で一番有名なムスタングプレイヤー。
彼が当初使用していたのはストラトでしたが盗難に遭ってしまいました。その後アメリカのガレージセールで安く売られていたムスタングを人伝に入手したそうです。そのムスタングはブルーにストライプのモデルでした。因みに3本ラインの有無は製造年代による違いで、1969~1975年モデルの特徴です。
チューニングが狂い安いムスタングですが、Char氏はフラットしてしまった弦をチョーキング気味にして音を合わせたり、ビブラートをかけて狂いを誤魔化すプレイを多用します。
また曲が終わるまでチューニングできない際はコーラスで音を変えて乗り切ったりするそうな。
暴れ馬であるムスタングを彼ほど乗りこなしたプレイヤーは存在しないでしょう。
コユキ/BECK
意外にもBECKのキャラでは最も多くのギターを所有しており、最後に入手したのは3本ラインでオレンジのムスタング。フェス直前に「3本ラインでくるといい」との天啓を受け、イギリスの楽器店で運命的な出会いを果たしました。なんとそれを本番でいきなり使用します。
ちなみにブリッジカバー付き、白ペグです。
Fenderからコユキのシグネチャーモデルも販売されていました。
洪申豪(hom-shen-hao)/透明雑誌
台湾のロックバンド、透明雑誌のホン・シェンハオ君。性的地獄のMV内でソニックブルーのムスタングを使用していることが確認できます。
透明雑誌は2020年に活動を再開しているので、今後の動向から目が離せません。
Kurt Cobain(カート・コバーン)/NIRVANA
ジャガー編にも登場しましたが、デビュー以前からムスタングを使用していました。後にジャガーとムスタングの合いの子であるジャグスタングを生み出しましたが、完成には至らなかったとされています。そもそもジャグスタングはかなりムスタング寄りでジャガー要素は殆どありませんでした。
Thurston Moore(サーストン・ムーア)/Sonic Youth
ジャズマスター以前は白のムスタングを使用。ピックアップはストラトの三連シングルコイルが取り付けられています。
Simon Taylor-Davis(サイモン・テイラー・デイヴィス)/Klaxons
ソニックブルーとブラックのムスタングを使用。レフティのムスタングはかなりレアじゃないでしょうか。クラクソンズ自体は残念ながら2014年に活動を停止しましたが、UKロックに一撃与えた事は間違いありません。
Gravity’s Rainbowは大好きで今でも聴いています。
大竹雅生/ミツメ
ソニックブルーの1966年製を使用。元々はジャガーでしたがこの所はムスタングがメインです。
永井聖一/相対性理論
シフォン主義の全曲を1969年製のムスタングで弾いているそう。色はブルーの3本ライン。シフォン主義のあの空虚なサウンドはムスタングの細い音がもたらしていたのですね。確かにLOVEずっきゅんのサビ終了時のサウンドはムスタングのアーミングダウンだと思います。(3:00付近)
井上芽衣子(宮﨑あおい)
映画「ソラニン」にて。急逝した種田から受け継いだソニックブルーのムスタングを使用。ちなみに原作のタイトルはアジカンの同名曲が由来。
まとめ
ムスタングをメインにしている人は案外少なく資料を集めるのが大変でした。まあちょっとアレなギターですからメインにするには少々頼りないというのは分かります。
傾向としてはソニックブルーが多いことと、他にフェンダーギターを持っているという点がありました。特にジャガーやジャズマスターをメインにしている人がサブとしてムスタングも持っている印象です。
音とかプレイアビリティはともかくとして超カッコイイギターであることは間違いないので、手元に置いておきたい気持ちは分かります。
1960年に配布されたカスタムカラーチャートにすでに登場しており、フェンダーの中でも由緒正しきカラーと言えます。当時はデュポン社の乗用車用の塗料を使用しており、ソニックブルーは1956年型のキャデラック、ダフネブルーは1958年型のキャデラックのボディーカラーでした。ともにパステル調の水色で、ダフネブルーに比べてソニックブルーのほうがやや白い印象です。ソニックブルーは50S STRATOCASTER®/60S STRATOCASTER®/60S JAZZ BASS®で使用。ダフネブルーは70S STRATOCASTER®/60S TELECASTER® CUSTOM/60S JAGUAR®などのモデルで使用されています。
https://www.fender.com/ja-JP/howto/how-to-mij-traditional-about-color
因みにフェンダーの水色にはソニックブルーとダフネブルーがありまして、ソニックブルーの方がやや白くて薄い色です。記事中では水色を全てソニックブルーと書いていますが、ダフネブルーの可能性もありますので悪しからず。フェンダーの説明では併記されていますので、やはりフェンダーとしても近いカラーであると認識していると思われます。
玄人好みのギターではありますが初心者には扱えないというほどではありません。迷わず買ってしまいましょう。チューニング沼にようこそ。
マスタリーブリッジはノーマルブリッジのカタカタを打ち消しますので、ムスタングのチューニング狂いに対してもある程度有効です。
コメント
がんばれ『ムスタング』!!
『発音はマスタングの方が近いですが、日本では慣例的にムスタングと呼びます。』
全日本が涙する神のようなお言葉!!
自動車界隈ではかなり以前から『マスタング』が完全制覇していましたが、
飛行機界隈でも『ムスタング』は絶滅したようです。
ギター界隈では現状『ムスタング』が絶対優位を誇っているので死守してほしい。
がんばれ『ムスタング』!!
太陽(SUN)を『スン』とは読まないだろうと言われれば返す言葉も無いのですが…