メンテナンス用品が増えてきましたので、それぞれの性能を検証してみようと思い立ちました。
丁度手元にはボロのネックがあります。フレットはくすんでおり、指板には汚れが浮いていますね。それではグッズを一通り試してみましょう。
FRETBOARD CLEANER
まず最初に、指板の清掃からですね。何を塗るにしても、汚れを落とすのが先決です。シャンプーの前にリンスをする人も居ないでしょう。
無塗装のローズウッド指板には汚れが蓄積しやすく、雑に扱われたジャンクギターだと特に顕著ですね。どの程度まで清掃を追い込むのかは意見が分かれる所ですが、個人的にジャンクギターであればクリーナーの使用は妥当だと思います。汚れた指板は単に見た目が悪いですし、フレットの浮きの原因にもなります。
TRICKのフレットボードクリーナーは、布にスプレーしてから使うことを推奨しています。これはギターのケミカル全般に言えることで、直接塗ると供給過多でムラやシミになる可能性があります。
しかし今回私は説明書を無視して、直接指板に噴射しました。何故かというと、海外のリペア動画で同じことをしていたのを見たからです。汚れも酷いことですし、これが直接かかったからといって問題はないだろうと判断します。
全体的にウエスで拭き上げ、フレットの際など細かい部分は歯ブラシで仕上げます。
フレットボードクリーナーだけで十分綺麗になりました。手垢の跡が落ちているのが分かると思います。フレットの汚れもある程度落ちていますね。しかし指板の油分が落ちて艶が失われていますので、次のステップが必要です。説明書でも、レモンオイル等で仕上げることを推奨していますね。
FRET BUTTER
次はフレット磨きの専用品、フレットバターを使用します。これは前回の記事でも書きましたが、マスキング不要でフレットを一気に磨き上げることが出来る製品です。また指板の保湿も兼ねています。
説明書通りに全体に塗った後、清潔なタオルで「横磨き」します。タオルの面を変えて、汚れが付かなくなるまで繰り返します。
ご覧の通りピカピカになりました。フレットの金属光沢が増して、指板も深い色艶を取り戻していますね。通常でしたらここまでで十分かと思います。
レモンオイル
今回は検証のため、レモンオイルで仕上げます。レモンオイルの使用は賛否両論ありますが、私は時と場合により使う派です。
ジャンクギターは得てして保存環境が悪く、積もったホコリが油分を奪っており指板がカラカラに乾ききっていますから「使ったほうがマシ」であろうという考えです。まず悪化はしないでしょう。実際、レモンオイルを塗ったからといって割れたとか曲がったとかいう話は聞いたことがありません。
しかし後述するように、フェルナンデスのレモンオイルを塗ったところ導管が白くなってしまったことがありますので、出来るだけ高品質のものを選んだほうが良いでしょう。
古く、汚れていれば、使う。そうでなければ、使わない。そのぐらいの認識で良いと思います。
こちらがレモンオイルを塗布した後。さっきよりも一段と深い艶になったのが分かります。しかしこれは一時的なもので、数日で落ち着いてきます。艶を長持ちさせたいのであれば、蜜蝋やミネラルオイル等のワックス成分が必要になります。それらの成分を配合したレモンオイルも存在しますので、原材料をよく確認して選びましょう。
少し角度を変えて。マスキング無しのお手軽メンテで、ジャンクネックがここまで綺麗になるのでしたら十分ではないでしょうか。
レモンオイル論争について
レモンオイルの使用について賛否が分かれる理由は、
- 通常は必要ないから
- レモンオイルにも色々あるから
- とりあえず塗ってみたくなるから
といった部分にあると考えられます。
いつも弾いているギターであれば指板がそんなに乾き切ることはありません。塗らない派の主張としては、「メーカーが推奨してないから」「トラブルを招くおそれがあるから」という所でしょうが、実際ギブソンとしては「塗っても良い」としていますし、マーチンとしては「必要ない」といったように、メーカーでも意見が分かれています。つまり絶対的な解は存在しないので、自己判断で好きにしましょう。
私の出した結論としては、「高品質のレモンオイルを少量塗る程度なら問題ない」というものです。だって実際大きなトラブルが起きたことはありませんし、指板が綺麗だと気分が良いですからね。以下に、私が知っている製品の使用感をまとめます。
FERNANDES
フェルナンデスの方には申し訳ないですが、指板に塗るのはオススメしません。これを塗った後導管が白くなってしまったことがあり、同様のレビューを見たことがあるからです。また他の製品に比べ揮発性が高く、保湿性がほとんどありません。その一方で洗浄力はとても高いため、ボディ塗装面の汚れを落とすには重宝しますが、指板への使用は避けたほうが良いです。私はジャンクギターの全体を一気に拭き上げる場合に限り、こちらを使用しています。しかしまだ使い切れそうにありません。
D’Addario
私がメインで使っているのはダダリオのレモンオイル。こちらは粘度が高く保湿力も十分です。ちょっとコッテリしているためボディに塗るには向いていませんが、指板に使う分にはこれで十分かと。いたって普通のレモンオイルであり、量も値段も丁度よいので無難な選択肢であると言えます。これでもなかなか使い切れませんから、レモンオイルを買う時は、「量が多くてお得!」という考えは捨ててください。
Freedom Custom Guitar Research
フリーダムのレモンオイルは蜜蝋を配合しておりますので指板に優しく、艶が長続きします。やはり長期的な保護という観点からすると、ワックス成分が必要になってきます。
HOWARD
ハワード社のオレンジオイルは1969年頃に開発されたといいますから、その歴史はなんと50年以上!ルーツは家具のメンテナンス用品ですが、ギターにも使えます。公式にラッカー塗装面及び無塗装の木部への対応を謳っておりますので、特に問題ないかと。香りも良いです。
まとめ
色々といっぺんに試してみましたが、正直言って塗りすぎだと思います。しかし過剰に塗ったところで、一週間以上経った今現在、特に問題は起きておりません。むしろ綺麗な状態をキープしており気分が良いです。
指板の状態を過度に気にする必要はありませんが、ちょっとくらい何かを塗っても問題はありませんので、個人の判断で自由に楽しめば良いかと思います。
重要なのは高品質なものを選ぶことと、塗りすぎないことではないでしょうか。
コメント
オイルについてですが、TC楽器さんはBig Bends Fret Board Juiceを使用しているらしいです。検索したらJohn Suhrも使っていたらしく、良さげですね。